共同不法行為による交通事故の責任|同乗者や求償の問題点
タクシーに乗っている時に、他の車に追突された時に怪我を負ってしまった場合どうすればよいのでしょうか?
怪我の治療費の支払いやこの事故で仕事を休まなくてはならなくなってしまった等の損害賠償請求はどのように請求してよいのか、誰に請求するのか。分からない事だらけです。こういった場合の対処等を紹介していきます。
共同不法行為とは?
民法719条1項 共同不法行為責任について記載されています。
数人が共同不法行為によって他人に損害を与えた場合は、各自が連帯して損害を賠償する責任を負うと書かれています。
共同不法行為が成立する為の要件は下記になっています。
これだけで、共同不法行為が成立するのです。
全員が共謀または共同で不法行為を行った事までは民法では必要ないと言っています。数人の不法行為がわざとやミスによるものであっても成立するのです。
同乗者は誰に求償できるのか?
タクシーに乗っている時に他の車に追突されてしまったような交通事故で怪我をしてしまった場合は誰に損害を求償すればよいのでしょうか?
乗っていたタクシーの運転手?相手の車の運転手?タクシー会社には求償できないのか?などいろいろな疑問が浮かんできます。
怪我をした同乗者はタクシーの運転手と相手側の運転手の過失割合を問わず両方に損害を求償する権利を有しています。
例えば相手側が8割 タクシーが2割の過失でも、同乗者は両方に5割ずつの請求が可能と言う事です。
損害を与えられた被害者は加害者全員に対して損害賠償を請求する事ができるのです。但し、加害者の一人が損害賠償を全額被害者に支払った場合は、被害者は他の加害者に対して賠償を請求する事はできません。
怪我をした同乗者はタクシーの運転手では無くタクシー会社には損害を求償することができます。この場合タクシー会社は運転手を雇っているので使用者責任を負う事になり、被害者に損害を請求された場合は賠償しなければなりません。
この場合の損害賠償請求権の問題点
損害を被った同乗者に損害賠償の請求を支払った後にも、加害者間での問題が発生します。
タクシーの運転手が全額、被害者である同乗者に損害賠償した場合、相手側の運転手は損害賠償していない事になります。
この場合は連帯債務なのか不真正連帯債務なのかで学説は分かれています。連帯債務の場合は過失の割合は平等になりますが、不真正連帯債務の場合は別の法律で明記されていない限り相手側に求償する権利が発生しない事になります。
裁判所では不真正連帯債務を指示していますが、裁判上では双方の過失割合によって損害を賠償しなさいと言う判決が採用されています。
つまり、判例上ではタクシーの運転手が全額支払っていても、過失割合で相手側に8割の過失があった場合は、タクシーの運転手は相手側に8割の求償権を有する事になります。またタクシー会社が全額支払った場合も同様に相手側に8割の求償権を有することになります。
まとめ
- 共同不法行為は加害者の故意・過失を客観的にみて一体となって被害者に損害を与えた場合に成立する
- 被害者は損害が発生した場合、加害者の両方または使用者(会社)に損害賠償を求償する権利が発生する
- 損害賠償を支払った加害者は共同不法行為を行った者に対して過失割合に従って求償する権利を有する
こういった事故には遭遇したくはありませんが、自分が被害者や加害者になった場合、このような法律行為が行える事を覚えておきましょう。